遠州酒蔵見学 その2

さて、遠州酒蔵見学は、掛川市の土井酒造さんへ。

■株式会社土井酒造場 http://kaiunsake.com

土井酒造は、静岡県掛川市にあり、徳川・武田の攻防戦が行われたという高天神城址のふもとにあります。そう、ブラタモリでおなじみ、山のキワには水が湧く。遠州の雨を受けた水を使った酒造をされています。

山に抱かれる工場。
正面が酒造の屋敷、左の白い大きな建物は倉庫。
桜の向こうに立派な門。
川と塀に囲まれた立派な屋敷です。


土井酒造さんは家族経営といった雰囲気で、対応いただいた会長はお父様で、社長は息子さんとのこと。直売所は、これも大変立派なご自宅の土間あたりに接客スペースを配したもの。この日は改築作業真っ最中でした。息子さん家族が住みやすいように現代風に変更しているようですが、旧来の梁や柱を残しての改築の様子が垣間見えました。

立派な松! これくらい家の近くにあると、建て替えの時に伐られてしまうことが多いので、貴重です。
同じくらいご自宅も歴史のある建物とお見受けしました。


現在酒蔵見学はされていないということで、直売所のスペースで土井会長から直接お話しを伺いました。もちろん、試飲させていただきながら・・・

夏季限定の「開運 特別純米 涼々」
このセリフしかなくて恐縮ですが、おいしかったです!


土井酒造といえば、銘柄「開運」が著名です。
おめでたい銘柄だけに、新築祝いなどのお祝い事によくプレゼントされます。そして我が家は父が設計士をしていたため、おそらく新築祝いのおすそ分けをいただいたのでしょう、実家にはいつでもこの開運が1−2本はあったものです。恐縮ながら「土井酒造」というお名前は存じていなかったのですが、この銘柄とこのラベルを見て、急にめちゃくちゃ身内な気持ちになってしまいました。

どこまでもめでたい。
「ますます繁盛」にかけた「二升半の特大ボトル」もあります。
※画像はリンク先からお借りしました


そして土井会長、全っ然商売っ気がありません(笑)。
「この涼々というお酒の着想はどこから?」
会長「なんかちょっと作ってみたら、評判がよかったから」
「商品開発はどのように?」
会長「うん、まあ、たまたま面白いのができたら、出してみようかなって」

なんだろう、このゆるやかさ(笑)
勝手に、経営大丈夫なのかしらと心配になってしまいますが、息子である社長さんは販路開拓に勤しみ、最近では海外への輸出量もけっこうあるのだとか。部外者が心配することじゃないですね(笑)

そんなゆるい感じを出しながらも、酒造りは好きだと断言された会長。好きだからこそやるし、オレが好きでやってたから息子も継ぎたいという気持ちになってくれたようだと。
好きだからやる、という姿勢、素敵です。

そして、なぜ酒造りが好きなのか。
会長「お酒を飲むと、楽しくなるから」

土地柄、お祭りやら寄り合いやらで人が集う機会は多く、そういう時には酒が出る。みんなで飲んで陽気に楽しい時間を過ごす。そういうのが、酒の役割だからね、と会長。
個人的には、こういう姿勢で、身の丈にあった規模で好きなことをされている土井酒造はとても素敵だと思いました。

ちなみに土井酒造さんも、お酒の神様の神社から杉玉を買って吊るしています。

門の軒先に。

この杉玉、一年で役目を終えるのですが、それを捨てるのも忍びないということで、会長はみんなとっておいてあるのです!

勢ぞろいして、かわいい・・

別れ際、会長がお土産を持たせてくれました。
親しくなった写真家が撮ってくれたという「土井酒造 開運 写真ハガキ12枚セット」でした。製造工程の順に、洗米から始まり、醪(もろみ)の様子などの各工程を美しく撮影してあるのですが、最後の12枚目は、「浄水場」でした。

「洗浄水などは、活性汚泥槽に集めて浄化する」
お借りした水は、ちゃんときれいにしてお返しする姿勢。


土井酒造さんでは、当然のように排水のことも気にかけていたからこその1枚なのでしょう。マニアックなところですが、ちょっと声にならないほどの感動をいただいて、掛川の地を後にしました。