人生のあるべき姿 – 先人訪問
先日、もうすぐ90歳という方とお話をする機会がありました。
全国の玩具コレクションをしていて、市に寄付された方です。
大変感銘を受けたので、レポートします。
「もうすぐ90歳だが、毎日わくわくして暮らしている」
そうおっしゃるおじいちゃんは、風貌も自由人、
生業も骨董屋さんで、かなりのキワモノに間違いありません。
キワモノっぷりを聞けば、
骨董の仕入れのついでに全国の玩具もコレクションし、
のちに、こけし単体の蒐集も開始、
拝見したところ、軽く500体はあると思われる圧巻さ。
こけしは、もはや仕入れのついでではなく、こけしのために出向いたとのこと。
単に購入するだけでなく、作っている職人さんと仲良く
なるのが信条。ゆえに解説がすごい。
「このこけしは父ちゃんの作。清純派の顔ね」
「こっちは息子の作。あんまりいい顔じゃない。
でも酒を飲んで描くとなんとも言えない良い表情なんだよ〜
ああ、これが飲んだ時の作品」
キャ「酒って、東北だとやっぱり日本酒です?」
「いや、焼酎」
なんとー
こけしを集めに行って、
その家族構成も、好きな酒の種類も分かるくらいの
交流をしてくるってすごい。
素人から見たらあまり差の分からないこけし群の中から、
さっと取り出して見せてくれる。
玩具、こけしのみならず、
道ばたにある草、山のキノコ、川を泳いでいる魚、なんでも詳しい。
どこがすごいか面白いか知っていて、それを生き生きと話してくれる。
地元小学校の自然観察クラブでもそういったお話をしてくるとのこと。
そのスタンスに感動する。
「オレは、針の穴程の穴をあけて、
その向こうに面白いことがある!って見せてやるだけだよ」
「その穴を広げるかどうかは、本人がそうしたいかだからね。
それでも、知らなければ興味を持たないから、
ちょこっっとだけ見せてやるんだ」
嗚呼すてき。
それが人生の先を歩く先輩としてのあるべき姿ではなかろうか。
押し付けるのではなく、本人に任せて。
もう1つの感動。
お住まいはこう言っては何だが、とても質素なもので、
案内された部屋は、もともと倉庫だったところを掃除して
自分で壁の色を塗って、生活する空間にしたとのこと。
確かに、壁も畳もくたびれ感は否めない・・・だがしかし。
一角には、椿が吊り籠(びく?)に活けてある。
もう一方の角の棚の上には、割れ花瓶に梅の花が。
大変に美しく、凛とした空気が漂う。
ああ、私達(客人)のために花を選び、今朝摘んで、
活ける。
花は野にあるように見えた。
これがもてなしかと思う。
室内に切り取られているために美しさが際立つ。
利休さんを呼んできたいくらいだった。