アベリア襲来[屋台大学] その2
■1つ1つの小さなボタンの掛け違いを、1つ1つ取り持つ
印象深かった順に書いております。
その2で早速、アベリアが今別府の街でどんな活動をしているかを紹介します。
それは「1つ1つの小さなボタンの掛け違いを、1つ1つ取り持つ」。
別府の街には、立命館アジア太平洋大学があり、様々な国からの留学生がいます。
別府の人口12万人に対して、留学生は3000人。40人に一人という高い割合です。
成功例としてこんな記事も書かれるくらい。
>>別府の「超グローバル大学」は何がスゴイのか by東洋経済ONLINE
上記の記事には抜けていることがある。
それは「別府の日常に留学生を溶け込ませた力」で、それはアベリアが原動力なんだと私は思う。
記事にあるように、150億や42億円の資金、立命館職員の積極的な勧誘、奨学金などが土台を作ったのは間違いないが、いざ留学生が街で暮らす段階になると、そういった大掛かりな力の出番はない。もっともっと身近な力が必要になる。つまり、1つ1つの小さなボタンをちゃんと見てて、掛け違えてたらその1つ1つ取り持つ力。
狭い日本でも街が違えば習慣が違う。言葉も違う。いわんや海外をやである。当然習慣の違いがあり、中には別府市民にとって受け入れ難かったり、不愉快だったりすることもある。
それを聞きつけたアベリアは、飛んでいく。駆けつける。
何があったのか、どうしたかったのか、どのあたりが嫌なのか、聞く。
留学生に悪気はないこと、彼らの故郷ではそれが普通だということを話す。
そうか、悪気はないし、ただ違うだけなんだと知れば、一歩譲歩できる。
そして、目鼻立ちが違ったり言葉が違って全然違うように見える留学生たちも誰かの家族であって、何にも違わない。自分の孫や子どもだと思って接して欲しい、とアベリアは訴える。
留学生の方にも同様に、日本の”あたりまえ”だとか、悪気はないということを伝えただろう。
日常的に起こる、やれ調理している時にくさいだの、やれ風呂の入り方がわかってないだの・・・という1つ1つを取り持っていく。
ここで意識的に私は「取り持つ」と言いたい。「取り除く」ではなく。
負の意味合いにしろコミュニケーションが生まれたことは消したくない。互いの文化の違いをお互いが認識したというエネルギーなんだから、正の方向に転換すればいいのだ。不快感は相手を知っていけば消すことができる。
お互いを無視するような関係性より全然良い。
アベリアは言う。
「川の上流で少しでも悪い方向に流れ出したら、その後流れはどんどん悪くなっていく。だから、小さな、ほんの小さな石であっても良くない流れを生もうとしていたら、ちょっとその石の向きを変える、それだけでいい方向に流れていく」
そうだ、その通りだ!!!
アベリアは、シリアやあの辺の紛争も心配していた。「いま、光ネットワークが世界中繋がっている。光がつながるんなら、温泉も繋ぎたい。武器を持っている人に、『今日は温泉の日だから! いーからいいから、武器は置いて! 温泉入ってゆっくりしな!』と言いたい」
私もそう言いたい。私は静岡県民だから「とにかくお茶飲んで一服しな!」と言いたい。
とにかく、アベリアがしていることは、根源的であり、人が誰しも骨身にしみることが発端なのだ。
例えば、留学生が役所に申請する手続きについて。1回役所に行くには交通費が1000円かかる、なんだかんだと修正などで何度も呼び出される。その留学生の故郷では、チャイが一杯5円で飲めるのに、交通費1000円かけて毎回行かなければならない。食べていくので精一杯、故郷より寒い日本で暮らす衣料を整えるのでも精一杯なのに、交通費をそんなにかけさせるのはおかしい!!!!
だから、役所に訴える。(アベリアは市役所職員であるので)「申請は大学で、私がまとめて受け付けて、私が役所に持っていきます。内容がちゃんとしていれば問題ないでしょう?」
役所はもちろん、NGを出す。まあ、ルールは守っていかないと秩序が保てないというのも分かります。
でも諦めないアベリア。だって、お金がないってことは、お腹いっぱい食べれないってことよ? ひもじいのはつらいよ? 寒いのに震えてないといけないのよ? それはつらい。なんとかしたい。
根負けした役所はついに通達する「あなたが責任を持つんでしたら、結構ですが、責任取れますか?」
アベリアはとっさに思う「責任取る・・・ってどういうことやろ? 命を取られるんやろか? それとも私の家族がつらい思いをするんやろか・・? いや、よくわからん、よくわからんけど、責任は取るよ!!」
今では、アベリアが大学に行き、一手に申請を受け付け、まとめて役所に提出している。何も悪いことは起こっていないという。
お腹がすく、寒い、さらには人に冷たい目で見られる・・・といったような、とにかく誰もがその身で感じたことがあるつらさを、なんとか軽くしたい・なくしたいという気持ちで動くアベリア。
そこには真実があり、人種や文化とは関係なく通じるものがある。
その3へ続く・・・